- 測定概念・対象者
Sports Supplement Belief Scale(SSBS)はHurst et al.(2017)により作成された。この尺度は、アスリートがサプリメントのパフォーマンス向上効果に期待し、それを信じる度合いを測定することを目的としている。
ゲートウェイ仮説 (1, 2) を基に、Hurst et al.はパフォーマンス向上効果に関する信念を評価し、ドーピングリスクが高いアスリートを識別する可能性を探るためにSSBSを設計・検証した (3)。これまでの研究により、サプリメントの効果に対して強い信念を持つアスリートは、ドーピングに対してより肯定的な態度を示し、ドーピングに関与する可能性が高いことが示唆されている (1, 4, 5)。SSBSを用いることで、スポーツサプリメント使用によるパフォーマンス向上等の利益に関するアスリートの個人的な信念を測定することが可能である。
SSBSの原版尺度作成研究では、サプリメントを使用するアスリートは未使用者よりもサプリメントに対する信念が強いことが明らかにされた。また、SSBSとサプリメント使用頻度、使用種類数との間に有意な相関関係が認められている。日本語版尺度(Japanese version of Sports Supplement Belief Scale, SSBS-J)は、Murofushi et al. (6)が原版の作者たちと共に開発し、その信頼性および妥当性が検証されている。原版は英国のアスリートを対象に開発されたが、日本のアスリートにおいてもサプリメント使用者のSSBS得点が高いなどの同様の研究結果が得られている。対象者はスポーツ活動を行うアスリート全般であり、スポーツサプリメントの使用者および未使用者の両方に適用可能である。
- 作成過程
逆翻訳法により日本語版尺度を作成し、日本の大学アスリート356名のデータより、妥当性・信頼性の検討を行った。
- 妥当性
構成概念妥当性の検討を行うために、第1コホート(131名)を対象に探索的因子分析を行った結果、第1因子の固有値は3.724、累積寄与率62.07%であり、原版と同様に6項目1因子構造であることを確認した。次に、基準関連妥当性の検討を行うために第2コホート(224名)を対象に確認的因子分析を行った結果、潜在変数(因子)と観測因子(経路係数)の比は、0.076から1.04の範囲であり(Fig. 1)、すべてのパス係数は p < .001 で有意であった。適合度指数は許容範囲内であった(RMSEA = .111, χ2/df = 33.673 [p < 0.001]、GFI = .948、AGFI = .878、CFI = .967、TLI = .946)。